2026/09/26 17:27
また、シカにやられました。
みかん畑を見回っていると、葉っぱがなくなっている木があります。
葉っぱだけならまだしも、困るのは幹までかじってしまうことです。
みかんは、植えてすぐに収穫できるものではありません。
苗木を植えて、枝を整えながら、何年もかけて育てていきます。
少しずつ木が大きくなって、「これからたくさん実をつけてくれるかな」
そんなことを考えながら育ててきた木です。
その幹がかじられているのを見ると、やっぱりつらいものがあります。
木についた傷を見ながら、
「ここまで育ててきたのになあ」
と思ってしまいます。
電気柵も設置しています
もちろん、何も対策をしていないわけではありません。
畑の周りには電気柵を設置しています。
それでもシカは入ってきます。
電気柵を突き破るようにして入ってくることもあります。
電気柵も決して安いものではありません。
しかも、設置すれば終わりではありません。
草が伸びれば刈り、電線に草や枝が触れていないか確認し、壊れていれば直します。
最近つくづく思うのは、
農業は、作物を「つくる」だけの仕事ではないんだな
ということです。
木を育てる。
草を刈る。
畑を維持する。
そして、野生動物から作物を守る。
こうした仕事も全部含めて、ようやく一個のみかんが収穫できます。
シカが悪い、と言いたいわけではありません
農家からすれば、せっかく育てたものを食べられるのですから困ります。
でも、シカにはシカの事情があるのでしょう。
周りを見渡せば、昔は耕作されていた場所が使われなくなり、草木に覆われているところも見かけるようになりました。
野生動物の問題は、簡単に解決できるものではないと思っています。
だから、
「シカが悪い」
「誰かが悪い」
と言いたいわけではありません。
ただ、農業の現場では、作物を育てるだけではなく、作物を守るためにも手間と費用がかかっている。
そのことを少し知ってもらえたらと思っています。
「安く買える」の向こう側
農産物は安い方がいい。
これは当然だと思います。
私だって買う側になれば、安い方がありがたいです。
でも農家になってみると、店頭に並んでいる農産物の値段だけでは見えない仕事が、たくさんあることに気づきます。
肥料や燃料、農業資材。
そして今回のような鳥獣被害から畑を守る設備にも、お金と時間がかかります。
だからといって、
「農産物をもっと高く買ってください」
と言いたいわけではありません。
ただ、
一個のみかんが店頭に並ぶまでには、実を育てる以外にも、いろいろな仕事がある。
そんなことを少し知ってもらえたらうれしいです。
「食べ物がある」は、当たり前なのだろうか
スーパーへ行けば、野菜がある。
お米がある。
果物がある。
欲しいものを手に取って、お金を払えば買うことができます。
あまりにも日常的なことなので、それがこれからもずっと続くような気がします。
でも、畑に立っていると、ときどき考えます。
食べ物が普通に買えることって、本当は当たり前じゃないのかもしれないな、と。
一本のみかんの木を育てる人がいる。
その畑の草を刈る人がいる。
台風が来れば心配して、病気や害虫が出れば対処して、シカが来れば柵を直す。
そんな日々の積み重ねの先に、ようやく収穫があります。
普段、そんなことを考えながらみかんを食べる必要なんてないと思っています。
おいしいと思って、気軽に食べてもらえれば、それが一番です。
ただ、ときどき、
「このみかんも、どこかの畑で誰かが育てたんだな」
くらいに思ってもらえたら、それで十分です。
それでも、また育てます
シカにかじられた木を見れば、やっぱり悔しいです。
何年も育ててきた木ですから。
でも、シカに文句を言っても仕方ありません(笑)。
木の状態を確認して、できる手入れをする。
電気柵を確認する。
そして、またいつものように畑仕事に戻ります。
結局、農家としてやりたいことは、とても単純です。
おいしいみかんをつくって、皆さんに食べてもらいたい。
その気持ちは、シカに少しくらいかじられても変わりません。
また手入れをして、育てます。
そして今年も、
「おいしかったよ」
そう言ってもらえるみかんを届けられたらと思っています。🍊

