2026/10/04 15:06
今年、ミカン畑ではカメムシを多く見かけます。
農家にとってカメムシは、もちろん「ミカンの害虫」です。
ミカンにカメムシがついて、細長い口を刺して果実を吸っている。
できれば見たくない光景です。
■ 実は、カメムシの仲間はこんなに多い
普段はひとまとめに「カメムシ」と呼んでいますが、実は日本には1,300種以上ものカメムシの仲間がいるとされています。【参考1】
その中でも、果樹で問題になる代表的なものが、
・ツヤアオカメムシ
・チャバネアオカメムシ
・クサギカメムシ
の3種類です。【参考2】【参考3】
カンキツのほか、カキ、ナシ、モモ、ウメ、リンゴなど、さまざまな果樹を吸汁します。【参考2】
■ カメムシはどこで繁殖している?
ミカンについている姿を見ると、「ミカンを吸う害虫」というイメージが強いと思います。
果樹カメムシ類は、スギやヒノキなどの針葉樹林で、球果の中にある種子を餌として繁殖します。
そして、山林で餌が不足すると果樹園へ飛来し、ミカンなどの果実を吸汁します。【参考2】
この「種」に注目すると、さらに興味深い生態が見えてきます。
■ 果実を吸うのに、果実では繁殖できない?
代表的な3種類の一つ、チャバネアオカメムシについては詳しい研究があります。
チャバネアオカメムシは、さまざまな植物の種子(胚)を餌にして繁殖するカメムシです。【参考3】【参考4】
カメムシの口は、細長いストローのような形をしています。
その口を植物に突き刺して、中の養分を吸います。
人間が栽培している果物では、厚い果肉が壁となり、そのストロー状の口が種子まで届きません。
そのため、チャバネアオカメムシは栽培果実を吸汁することはあっても、栽培果実では繁殖できないことが報告されています。【参考3】
「果実を吸っているのに、その果実では繁殖できない。」
■ しかも、ウンシュウミカンには種がほとんどない
私たちが普段食べているウンシュウミカンには、そもそも種子がほとんどありません。【参考5】
チャバネアオカメムシについて分かっていることを並べてみると、
・スギやヒノキでは、球果の中の種子を餌として繁殖する。
・栽培果実では、厚い果肉に阻まれて種子まで口が届かず、繁殖できない。
・ウンシュウミカンには、そもそも種子がほとんどない。
果実を吸っているのに、その果実では繁殖できない。
しかも、ウンシュウミカンには種がほとんどありません。
ここまで知ると、農家としては正直、
「繁殖できないなら、みかんは吸わないでほしいな……」
と思ってしまいます。
とはいえ、実を見つけて口を刺し、吸汁するのはカメムシの習性です。
こればかりは仕方ありません。
みかんを吸われるのは困りますが、その生態を知ってみると、いつも「害虫」として見ているカメムシにも、意外と知らない一面があるものです。
※補足
「厚い果肉が障壁となって口が種子まで届かず、栽培果実では繁殖できない」という研究結果は、チャバネアオカメムシについて報告されている内容です。
ツヤアオカメムシについても同じである、という意味ではありません。
【参考資料】
参考1
カメムシ亜目(異翅亜目)の国内種数について
日本には1,300種以上のカメムシの仲間が生息するとされています。
参考2
農林水産省「カメムシ類の防除」「果樹カメムシ類とは」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/kamemusi.html
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/attach/pdf/kamemusi-1.pdf
参考3
外山晶敏「果樹カメムシ類の発生生態と防除対策」
農研機構 果樹研究所
https://www.jppa.or.jp/archive/pdf/68_07_48.pdf
参考4
小田道宏ほか
「果樹を加害するカメムシ類の生態に関する調査(第2報)
チャバネアオカメムシとクサギカメムシのスギ及びヒノキでの発生生態」
https://www.pref.nara.lg.jp/documents/7616/12-120-130.pdf
参考5
農研機構「ウンシュウミカンの全ゲノムを解読」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nifts/079775.html

